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特集!あの人の本棚
80.

秋葉哲也   (株式会社アシュラスコープインスタレーション 代表取締役社長)


プロジェクション・マッピングの原点 (秋葉哲也インタビュー)

秋葉哲也

恋人と幼馴染みに薦められたシュルレアリスムとマーク・トウェイン

―― ダリやブローネルなど美術系の本も選ばれていますね。

秋葉 美術には全然興味がなかったのですが、当時付き合っていた彼女が「あなたのように、ぐにゃぐにゃ言っていることをやっている人たちがいる」と(笑)。それなに?って聞いてみると、シュルレアリスムっていうのがあると。わけのわかんないヒゲのおっさんがいると。その情報をきっかけに意識的にシュルレアリスト系に入っていった感じですね。

―― 大学で建築を学んでいた時ですか?

秋葉 いや、大学に入る前で高3か、浪人時代です。ダリ、マグリット、エッシャー、その中でブルトンの『シュルレアリスム宣言』も知って。脳の中の世界観を表現したようなビジュアルは、その後ずっと引っ張りましたね。その時期に、ビジュアルのかっこよさだけで何も知らずに「鉄男」(監督:塚本晋也)を借りてきて、家族のいる居間で観てしまったなんてこともありました。うおおおおおーって。

(一同笑)

秋葉 当時バンド活動をしていたのですが、ベースの裏にシュルレアリスム宣言の原文をペイントしたり、ダリの画集の解説に赤線引っぱったり、はずかしいくらい傾倒してました(笑)。

―― まさに芸術運動であり、思想運動ですね(笑)。

秋葉 これまでは絵にできないものを言葉にしたものに魅かれていましたが、この本は逆に絵にしてるけど言葉にできないものですね。

―― 秋葉さんの仕事に直結する部分が見えてきた感じがします。

秋葉 ダリやエッシャーも、テクノロジーがあればプロジェクション・マッピング(以下、PM)みたいなことを絶対やっていると思いますよ。エッシャーのだまし絵は動いたらすごくおもしろいし、ダリもテクノロジー寄りのことが好きな人だったので、自分の脳を拡張するのにコンピューターを使っていたんじゃないかな。

―― ダリの脳内ではそもそも動いていたんじゃないかと。

秋葉 ダリの絵なんかを見ているとそう感じます。自分のもっているイメージを他人に見せる近い方法がPMで、それがPMを思いついたきっかけにもなっています。

―― ダダやシュルレアリスムから約100年経っても、似た感覚でPMがあるという点がおもしろいですね。ビジネスで最近、「偶然性」という言葉もよく耳にするようになりました。シュルレアリスムの技法である“オートマティスム(自動筆記)”“コラージュ”も連想してしまいます。

秋葉 元々、シュルレアリスムが好きだということもありますが、ボーっと見ていた2つのものが、何かに見えたり、変化したりするような偶然性に、コンテンツを作る側としてはおもしろさを感じますし、意識的になります。それって建築でいえば、あそこに陽が昇ったその時だけ空間の様子が変わるなどと、建築家がインタラクティブ性を考えて作るのと似ていますね。

―― さて、次に『人間とは何か』ですが、これはちょっと今までと毛色が違いますね。

秋葉 この本の著者マーク・トウェインですが、『ハックルベリー・フィンの冒険』や『トム・ソーヤーの冒険』を書いている人です。ディズニーランドにある蒸気船がマーク・トウェイン号ですね。とはいいながら、全然読んだことはないんですけれど。『人間とは何か』も1回位しか読んだことがありません。

―― というと…。

秋葉 大人になってから、自分が10代の頃から永遠と言っていることってこれだろと、幼馴染みに渡された本なんです。この本は評論であって、老人が青年をボロボロに言い負かすような本です。
“人間の行動はすべて環境によって決定されるから、人間は利己的な欲望のために動く機械に過ぎない。人間の人生なんて幻に過ぎない。人が真に幸福であるためには、気が狂うしかない”

―― すごいですね…。

秋葉 調べてみるとトム・ソーヤーのような冒険系の青春群像劇を書きながらも、その後人間関係がボロボロになって、ひどい人生になり、晩年にこの本を書いています。そこで、人生でいろいろあった老人の言っていることと、10代の自分の言っていることが似てるって、どういうことなんだと思うわけです(笑)。言われてみると、人間の本質としてそれはそれとして自分にもあるわけです。ただそれだけだとグチになってしまうので、暫くしてじゃあどうするんだという意識に移りました。性善説ではなく。

―― 性善説で考えない辺り、仕事観にもつながってきそうですね。

秋葉 いいデザインって、それ以上デザインする必要がないんです。デザインをするっていうのは今の悪い所を見つけて直すことで、これはPMにも言えることです。まぁ、自分の性格で言えば、改善策を探すのが好きで、文句を付けるのが得意なところってことなんだけど、それって問いと答えをセットにして、実行に移すという点において仕事につながるところですよね。そう考えると、ベースの考え方としてマーク・トウェインの『人間とは何か』で書かれていることと一緒ですね。

―― ここまでシュルレアリスムといい、マーク・トウェインといい、自分から拾いにいっているのではなくて、他人に薦められて気付いている点も、『人間とは何か』と被るところがあっておもしろいですね。オリジナルなんてない!と。

秋葉 そうそう(笑)。自分にないものを自分で探して影響を受けたものは確かにあったけど、年と共に消えていってしまいますよね。むしろ、自分を説明するならこれを読んでみて!みたいな感じで誰かが具現化してくれているものに出会った時、影響を受けるというより、元々あったものとして共感しますね。

―― あとは、駄目な人が好きみたいですね(笑)。

秋葉 そうですね。そこから学ぶことが多いです(笑)。

(終わり)

プロジェクション・マッピングの原点 vol.2

シュルレアリスム宣言・溶ける魚

シュルレアリスム宣言・溶ける魚(アンドレ・ブルトン)

ダリ・私の50の秘伝

ダリ・私の50の秘伝 ― 画家を志す者よ、ただ絵を描きたまえ!(サルヴァドール ダリ)

ヴィクトル・ブローネル

ヴィクトル・ブローネル ― 燐光するイメージ(シュルレアリスムの25時)(齊藤哲也)<

人間とは何か

人間とは何か(マーク・トウェイン)
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プロフィール

秋葉哲也
秋葉哲也
株式会社アシュラスコープインスタレーション 代表取締役社長

あきば・てつや/1973年生まれ。学生時代に映像空間演出法をベースにプロジェクションマッピングを着想。2002年より空間デザインプロダクションとして「アシュラスコープ」を運営。2011年にプロジェクションマッピングを使用した空間デザインの企画制作を行う「株式会社アシュラスコープインスタレーション」を設立。店舗内装や美術館、コンサート、イベント、MV、舞台での演出、アーティストとのコラボレーション作品など数多くの案件を手がける。

幼い頃の無垢な想像力…もう一度「見えない存在を信じていた頃」の感覚を呼び覚ましてくれる手法として、観る者の想像力を問うプロジェクションマッピングを用いて、デザイン、アートの領域の中でグラフィックと映像の融合に力を注ぎ、表現の幅を広げている。

ライターについて

Writer 8
パイーノ

音楽・映画・スポーツ・笑いなどのドラマが栄養源。ライターをする傍ら、代官山の書店で働く。
「ホンシェルジュ」「READYFOR」他、TAMA映画祭企画「君が清志郎を知ってる」

プロフィール

秋葉哲也
株式会社アシュラスコープインスタレーション 代表取締役社長

あきば・てつや/1973年生まれ。学生時代に映像空間演出法をベースにプロジェクションマッピングを着想。2002年より空間デザインプロダクションとして「アシュラスコープ」を運営。2011年にプロジェクションマッピングを使用した空間デザインの企画制作を行う「株式会社アシュラスコープインスタレーション」を設立。店舗内装や美術館、コンサート、イベント、MV、舞台での演出、アーティストとのコラボレーション作品など数多くの案件を手がける。

幼い頃の無垢な想像力…もう一度「見えない存在を信じていた頃」の感覚を呼び覚ましてくれる手法として、観る者の想像力を問うプロジェクションマッピングを用いて、デザイン、アートの領域の中でグラフィックと映像の融合に力を注ぎ、表現の幅を広げている。

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