漫画『BIRDMEN』はキャラクターに魅力満載!青春SF物語をネタバレありで考察

更新:2021.12.1

2020年2月に最終回を迎え、完結した漫画『BIRDMEN』。夢や希望を抱きながら数々の現実に直面し、主要キャラクターたちは成長を遂げていきます。作中に新型ウイルスが登場するなど、世の中は綺麗ごとばかりじゃないという問いを投げかける本作。この記事では、そんな『BIRDMEN』の考察をネタバレありでお伝えします。

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2020年2月に完結!漫画『BIRDMEN』のあらすじを紹介

2020年2月に完結した、漫画『BIRDMEN』。まずはそのあらすじをご紹介したいと思います。

不満だらけの毎日に、辟易する主人公の烏丸英司(からすまえいし)。烏丸はささいなことに苛立ちを感じながら、日常を過ごしています。巷では鳥男の目撃情報が続き、その存在に興味を持つ人が増加。ある日、烏丸、鴨田樹真(かもだみきさだ)、鷺沢怜(さぎさわれい)、海野つばめの4人が乗るバスが、運転手のくも膜下出血による急逝により転落。4人は意識が朦朧とする中、鳥男によって命を救われます。

奇跡の生還を果たし日常生活へと戻っていった4人は、視力が改善していたり背中に翼が生えるなど自分の中で何かが変わり始めていることに気がつきます。自分たちの身体はどうなってしまったのか?その真実を知るために鳥男を探す4人。自分たちを助けてくれた鳥男の正体が鷹山崇だと知り、鷹山から鳥男の能力や謎の現象・ブラックアウトについて教わることにした4人。さらに鳥男としての力をトレーニングするため、5人で鳥部を発足します。

鳥男として生きることになった烏丸たち4人は、世界最高峰の学術都市EDENの存在を知り深く関わっていくことになります。運命に翻弄されていく、烏丸たちが行き着く先は一体どこなのでしょうか?

「BIRDMEN」の意味を解説!アニメ化にも期待!

BIRDMENとは一体何なのか?ここでは、その秘密に迫りたいと思います。

本作におけるBIRDMENは、通称・鳥男と呼ばれています。鳥男になる条件は、鳥男の血を飲むこと。しかし、誰でもなれるわけではありません。ひとたび鳥男になると背中に翼が生え、その翼からヘルメットや衣服を作ることができます。また空を飛んだり、鳥男同士でテレパシー会話したりもできます。

一定の周期でブラックアウトという現象が生じ、怪物と戦って打ち勝たなければならない運命にあります。

また覚醒が進むと、それぞれ異なった能力に目覚めていくようになります。 たとえば相手の嘘を見抜き自分はうまく人をだませるという「詐欺師(トリックスター)」や自分のダメージを回復できる「不死者 (ライフスティーラー)」など。これらの能力が、ストーリー展開にどう絡んでくるのかが見どころです。

ところで『BIRDMEN』は、アニメ化されているのでしょうか?2020年10月現在、アニメ化の予定は発表されていません。今後のアニメ化に、期待が高まります。

著者
田辺 イエロウ
出版日

主人公はヒガミ根性ありの負けず嫌い

漫画『BIRDMEN』の主人公は、中学生の烏丸英司。ヒーロー要素もある漫画の主人公としては、少し珍しいタイプのキャラクターです。

周囲を少し見下すような思考回路を持っていて、クラスメイトたちの会話を聞きながら心の中で悪態をつきます。実は人付き合いに不器用な性分で、他愛ない毎日を楽しく過ごす人々に憧れに近い感情を抱いている節があります。

『BIRDMEN』1巻

また冷静で頭の回転が速く、鳥男になった仲間たちにとって頼もしい存在になっていきます。負けず嫌いな一面もあり、客観的に自分を見ることができるキャラクターです。

そんな烏丸は最も冷静なキャラだからこそ、クスりと笑わせてくれる描写が存在。メインキャラクターたちの中で、目覚しく成長していく姿を見せてくれます。鳥部でのコードネームは、ブラックです。

王道の少年漫画のように、真っすぐな性格の主人公に共感できないという方にもおすすめの作品だといえます。

 

個性的だけど、どこにでもいる中学生のBIRDMEN仲間

主人公の烏丸だけではなく、鳥部のメンバーたちも個性たっぷり。ここでは主要キャラクターについて触れたいと思います。

●鴨田樹真

コードネームはグリーン。烏丸の幼なじみ。ケンカに強く、強面の雰囲気を持っているため周りから恐れられています。しかし実は人なつっこい性格で、空気を和らげる存在でもあります。

●鷺沢怜

コードネームはホワイト。金持ちの息子でイケメンという、モテ要素満載のキャラ。一見人当たりのいい性格ですが、学校では周囲と距離を保った付き合い方をしています。

●海野つばめ

コードネームはブルー。鳥部の紅一点。他のメンバーとは別の学校に通っており、鷺沢とは小学校からの友だち。人見知りをしない、無邪気な性格の女の子です。

仲間で集まった際には、どこにでもいる中学生らしいはしゃぎ方や遊びをくり広げます。

物語の鍵を握る、ミステリアスな少年・鷹山を考察

物語の鍵を握る、ミステリアスな少年・鷹山を考察
『BIRDMEN』4巻

ここまでBIRDMENの主要キャラについて触れてきましたが、BIRDMENを語る上で外せないキャラクターがいます。それは烏丸のクラスメイトであり、鳥部のメンバーでもある鷹山崇

コードネームはレッドで、烏丸たちの命を救った人物です。感情の起伏に乏しく、イマイチ何を考えているかわからないミステリアスな少年。ちょっとボーっとしている一面もあり、そんな一面が笑いに繋がることもあります。 
 

しかし烏丸たちにとっては、鳥男の先輩で頼りになる存在。実は鳥男になったのには、小学生の時に遭遇した墜落事故が由来していました。

モノローグを語る主人公ではないながらも1巻の表紙を飾った人物です。作者によると、烏丸と表裏一体の関係性として登場させているのだそう。

ケタ違いの強さを誇り、他の鳥男たちと一線を画した存在であることが徐々に明らかになっていく鷹山。物語の核心に迫る上で、鷹山が重要な鍵となります。鷹山は一体何者なのでしょうか。ぜひラストの鷹山の姿を見届けてください。

著者
田辺 イエロウ
出版日

 

漫画『BIRDMEN』の2つの魅力を考察

漫画『BIRDMEN』の魅力は、何なのか?ここではBIRDMENの2つの魅力について、考察していきたいと思います。

まず1つめの魅力は、大人と子どものリアルな描写。

たとえば主人公の烏丸は1人っ子ですが、パイロットの父はあまり自宅におらず母と2人でいることの多い家庭。息子に対して過干渉気味な母を、烏丸はうとましく感じています。感情をぶつけ続ける母と、何も言わない息子。お互いの思いに目を向けられず、すれ違い続けます。

また、普通の人間に戻りたいと願う烏丸たちは協力してくれる大人を探しはじめますが、世の中は綺麗ごとばかりじゃなく信頼できないことであふれていると思わせる描写があります。本作は、大人と子どもという存在をリアルに描写している作品であると言えます。

2つめの魅力は、ヒーロー要素を兼ね備えながら強さを競うバトル漫画ではないという点。

超人的な力で事故や事件にあった人を救うなど、時折ヒーローのような一面も見せる鳥男たち。実は鳥男は世界中に存在していて、作中にたくさんの鳥男が登場します。多くの超人が出てくると、強さを競うバトルがあるのでは?と思う方が多いのではないでしょうか。しかし、漫画『BIRDMEN』には勝ち抜きバトルは一切ありません。それぞれが己の信念のために、鳥男としての人生を闘い抜いていくことになります。

漫画『BIRDMEN』をネタバレ紹介!その1:はじまりの7人

漫画『BIRDMEN』の中盤から登場する、重要なキーワード「はじまりの7人」。
 

はじまりの7人とは鳥男の進化や退化、初期化といった全ての道へつながる特異点のこと。全てを可能にする最高の組み合わせで、はじまりの7人がそろうと望む力が手に入るというのです。それは普通の人間に戻りたいと願う烏丸たちにとって、なくてはならない存在。

ストーリー中盤からは、はじまりの7人を探す旅が中心となります。主要メンバーの中に、はじまりの7人は存在するのか?はじまりの7人は、どんな能力を秘めているのでしょうか。そして、はじまりの7人が揃ったときに鳥男たちが下す決断は、どんな未来へつながっていくのか。物語を高揚させる、重要な要素です。

漫画『BIRDMEN』をネタバレ紹介!その2:新型ウイルスが広まる世界

物語がクライマックスに向かうにつれて登場する、新型ウイルスという存在。

このウイルスはある目的のために開発されたのですが、致死率の高いウイルスで生存できる可能性が高いのは15歳未満の子ども。新型ウイルスは爆発的な感染力を持っていて、あっという間に世界に広まっていきます。感染を防ぐためにはワクチンが必要で、何も対策を講じなければ死者の数が増え続けるというのです。

世界中が混乱の渦に巻き込まれ空港のフライトが乱れるなど、コロナ渦と今もなお戦い続ける現代社会を思わず思い浮かべる世界観が広がっています。本作は2020年2月に完結しており、コロナウイルスが世界中に広まる前にこの設定は描かれました。そのため、その後の世界を予言したかの内容だという声も上がっています。

漫画『BIRDMEN』をネタバレ紹介!その3:打ち切りの噂もある、最終回が気になる

 

はじまりの7人や新型ウイルスが広まる世界など、気になるエピソード展開をくり広げていく漫画『BIRDMEN』。

気になる最終回は、どういう展開になるのでしょうか?最終回に向けての重要な要素は、世界中のどこかに存在するはじまりの7人を集めること。はじまりの7人がそろった時、一体何が起こるのか?世界に広まった新型ウイルスはどうなるのか?烏丸たちが行き着く未来とは……。

また物語中盤から世界中の鳥男たちが集いはじめ、いくつかの派閥のようになっていきます。この派閥が複数集まると、どういう展開になるのかも見どころ。物語の核心に迫る上での最重要人物、鷹山を鳥男にしたエヴァはどんな人物なのでしょうか?このような伏線を回収して、気持ち高まる結末へと向かっていきます。

そして最後まで鷹山と烏丸や、鳥部メンバーの心温まる関係性からも目が離せません。ハッピーエンドといえるかどうかは読者に委ねられているような作品です。しかし、自らの志を最後まで心に持ち続ける彼らを見ていると、読者まで空を飛びたくなってしまうすがすがしさが残る作品です。

 

著者
田辺イエロウ
出版日
2020-03-18

 

漫画『BIRDMEN』は、ロックバンドの曲から生まれた!

 

鳥男という新しいタイプのヒーローを描いた漫画『BIRDMEN』は、どのようにして生まれたのでしょうか?

ロックバンドTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの楽曲『バードメン』を、作者の田辺イエロウが聴いた際に赤い空を黒い翼の生えた男たちが飛ぶイメージが浮かんだことをきっかけに誕生しました。漫画『結界師』の連載が終わった際に次回作はヒーローもの寄りの作品にしたいと思い、楽曲『バードメン』を聴いたときに浮かんだイメージを元に作品を作り上げたそうです。

曲のイメージと異なった世界観になっている漫画『BIRDMEN』ですが、鷹山だけは少し曲のイメージに近いようです。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの『バードメン』を聴いてから、漫画『BIRDMEN』を読むと新しい気づきが生まれるかもしれません。

 

漫画家・田辺イエロウは日常と非日常の描写が繊細!代表作は『結界師』

漫画『BIRDMEN』を生み出した、漫画家・田辺イエロウとはどんな人物なのでしょうか?

田辺イエロウは武蔵野美術大学を卒業後、2000年に小学館新人コミック大賞少年部門佳作を受賞。2002年に『LOST PRINCESS』で漫画家デビューしました。代表作は小学館漫画賞少年向け部門を受賞し、テレビアニメ化もされた漫画『結界師』。

日常の描写に定評のある田辺イエロウは、日常と非日常のバランスを絶妙に描いています。また度々、劣等感や苦悩・葛藤など人間が生きていく上で持ち合わせる感情を、リアルかつ繊細に表現する作風の持ち主です。

漫画『結界師』、漫画『BIRDMEN』と、話題作を次々と生み出している田辺イエロウ。次回作にも期待が高まります。

 


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『週刊少年サンデー』にて連載されていた人気漫画『結界師』。夜に蔓延る妖たちを「結界術」を使いバシバシと退治していきます。主人公・墨村良守の「結界師」としての成長とその家族や仲間たちの戦いを描いた物語です。

主要人物たちの心の葛藤や、現実的思考。それらの要素を踏まえた上で、超人的な力を持った鳥男としての人生をどのようにして生きていくのか。普通の人間に戻りたいという願いは、果たされるのか。数々の人間ドラマを経て、クライマックスへと向かっていく本作。本作が生まれるきっかけとなったTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの楽曲『バードメン』を聴きながら、漫画『BIRDMEN』を読んでみるという楽しみ方をするのもいいかもしれません。

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