漫画『MAO』の面白さを徹底考察!高橋留美子節全開の新感覚ダーク・ファンタジー

更新:2021.12.1

漫画『犬夜叉』をはじめ、手がけた作品が続々とアニメ化。人気漫画家・高橋留美子は数々のヒット作を生み出し続け、紫綬褒章にも選ばれました。前作『境界のRINNE』終了から約1年5ヶ月の時を経て、新作漫画『MAO』の連載が2019年5月よりスタート。この記事では漫画『MAO』の面白さを徹底考察していきます。

ブックカルテ リンク

『MAO』は連載作品のほとんどがアニメ化されている高橋留美子の新作!アニメ化に期待!

2020年の秋、芸術などアカデミックの分野で功績を残した人物に贈られる紫綬褒章を高橋留美子が受章したことがニュースになりました。

高橋留美子といえば、漫画界の「生きる伝説」とも称されるほどの人気漫画家。小学館漫画賞を受賞した『うる星やつら』、古いアパートが舞台のラブコメ『めぞん一刻』、水をかぶると男が女に変身する『らんま1/2』、小学館漫画賞を受賞した『犬夜叉』、極貧の死神ストーリー『境界のRINNE』など、手がけた連載作品の多くがアニメ化されてきました。

ちなみに漫画『MAO』は2020年10月現在、まだアニメ化されていません。アニメ化決定の速報が、今から待ち遠しいですね。

『らんま1/2』の早乙女乱馬(男)と『犬夜叉』の犬夜叉、2つの作品で主人公役を演じたのが声優の山口勝平。山口勝平は『犬夜叉』の次作品にあたる『境界のRINNE』でも、主人公の父親役に抜擢されました。『MAO』がアニメ化された際に、山口勝平が出演するのかも気になるポイントのひとつです。

 


『めぞん一刻』について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

 

漫画『めぞん一刻』に低スペックでもヒロインを射止める恋愛術を学ぶ!

『犬夜叉』について詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

漫画『犬夜叉』の登場人物を徹底紹介!【ネタバレ注意】

妖怪、大正浪漫……るーみっくわーるど要素が全部入り!漫画『MAO』のあらすじ

「るーみっくわーるど」とは、高橋留美子作品を特徴づける世界観のこと。東洋の歴史や世界観を土台とし、SF的な要素と恋愛物語が展開されていくのが主な特徴です。ここからは、まさにそんなるーみっくわーるど全開ともいわれる『MAO』について、あらすじから紹介していきます。

中学3年生の黄葉菜花(きば・なのか)は、おじいちゃんと家政婦さんとの3人暮らし。ある日の帰り道、五行商店街の前を通りかかった菜花は、聞こえてきた音が気になり中に足を踏み入れます。すると空間がゆがみ、昔っぽい雰囲気の見知らぬ町にワープしてしまいます。

突然カマキリの化け物に襲われ、逃げまわっているうちに刀を持った青年に助けられる菜花。菜花を助けた青年は摩緒という名で、大怪我を追った菜花の手当をしてくれます。おまえは妖だと、摩緒から告げられる菜花。

町の入り口であるゲートを出て、元の世界へと菜花は戻ります。元の世界に戻った菜花には、超人的な身体能力が身についていました。自分の身体に異変を感じる菜花は、五行商店街のゲートをくぐり再び見知らぬ町へとワープ。菜花は摩緒と再会し行動をともにして行く上で、見知らぬ町の正体は異世界ではなく大正時代の日本だと気づきます。

陰陽師である摩緒は自身にかけられた呪いと解くため、蟲毒(こどく)の猫鬼を探し続けていました。一方、菜花は小学校の時に五行商店街で化け物を見たことがあり、やがて菜花と摩緒の関係は複雑に絡み合っていきます。

本作は令和と大正2つの時代を行き来する菜花、陰陽師と、蟲毒という名の化け物たちが数奇な運命に翻弄されるダーク・ファンタジーです。

著者
高橋 留美子
出版日
2019-09-18

【登場人物紹介1】主人公は陰陽師!タイトルにもなった摩緒(マオ)というキャラクターを徹底考察

【登場人物紹介1】主人公は陰陽師!タイトルにもなった摩緒(マオ)というキャラクターを徹底考察
『MAO』1巻

本項では漫画のタイトルと同じ名を持つ、主人公・摩緒がどんな人物なのかについて考察したいと思います。

左眼の下と背中に傷を持つ摩緒は、平安時代の陰陽師。猫鬼に呪われた日から不老不死に近い状態になってしまい、900年以上生き続けています。冷静沈着な性格で少し突き放すような印象も受けますが、ただマイペースなだけのよう。ギャグ要素の少ない主人公です。

摩緒は呪禁道を生業とする御降家の弟子として使え、不遇な役割を担って運命の渦に巻き込まれていきます。平安時代に摩緒がまきこまれた事件の謎が、現在につながる鍵となります。

呪いをかけた猫鬼を探し続ける、摩緒の旅そのものが本作の大きな核。猫鬼と摩緒が本格的に対峙した際に、初めて明らかになる真実があるのではないてしょうか。

【登場人物紹介2】物語のヒロインであり、『MAO』もう1人の主人公・黄葉菜花

【登場人物紹介2】物語のヒロインであり、『MAO』もう1人の主人公・黄葉菜花
『MAO』1巻

漫画『MAO』には、もう1人主人公がいます。それはヒロインの役割も担っている、黄葉菜花です。

小学校1年生の時に、陥没事故により両親を失い自身も死にかけた過去を持つ菜花。運動が得意そうに見えるのに、足が遅く運動が苦手。身体が弱く毎日特製のスムージーを飲むよう、おじいちゃんから促されています。実はこのスムージーには隠された事実があり、その秘密が徐々にあきらかになっていきます。

シリアスな展開が主な本作の中で、菜花がスムージーを飲むシーンは数少ないコメディタッチ部分です。スムージーを飲んだ感想が毎回違い、クスりとした笑いがこみ上げます。

菜花は過去に猫鬼と会ったことがあり、その事実が本作の核へつながっていきます。

【登場人物紹介3】個性たっぷり!摩緒の兄弟子たち

主要キャラクターの中で、特に外せないのが摩緒の兄弟子たち。平安時代に生きる陰陽師だった摩緒には、多くの兄弟子がいました。ここでは大正の世まで生き続ける、単行本6巻までに登場する4人の兄弟子について触れたいと思います。

・百火(ひゃっか)

火の属性を持つ陰陽師で、自信過剰のわりに気が小さい人物。

・華紋(かもん)

木の属性を持つ陰陽師で、礼節を重んじる冷静なタイプ。

・不知火(しらぬい)

水の属性を持つ陰陽師で、目的のためには手段を選ばない野心的な人物。

・白眉(はくび)

金の属性を持つ陰陽師で、百火と浅からぬ因縁があります。

兄弟子たちをつなぐのは、ある重要な共通点。その共通点は摩緒とも関わりがあり、これからのストーリー展開において重要な役割を担っていきます。

『MAO』の物語の核となる存在・猫鬼

『MAO』の物語の核となる存在・猫鬼
『MAO』3巻

物語の第1話から、その名が登場する猫鬼(びょうき)。物語の核を握る、猫鬼とはどんな化け物なのでしょうか。

摩緒に呪いをかけ不老不死に近い身体にした犯人である猫鬼は、その名が表すように猫型の蟲毒。底知れぬ力を持ち、最凶と恐れられています。過去に秘伝書を喰ったことで、人の寿命に関わる秘術を取得。元は平安時代に生きていた普通の猫でしたが、その正体は謎が多くまだまだわからないことがたくさんあります。

摩緒にかけた呪いだけではなく、摩緒や菜花に大きな影響を及ぼしている猫鬼。序盤はなかなか姿を現さず、摩緒は猫鬼を探し続けます。物語に張り巡らされている伏線の答えは猫鬼が知っている可能性が高く、どのような形で真実が明らかになっていくのか今後の展開から目が離せません。

重要なキーポイント・五行商店街

あなたの住む町や普段通る道にも、異世界とつながっているような気がする風景はありませんか?

漫画『MAO』の最重要ポイント・五行商店街は令和の世に生きる菜花にとって、大正時代と現代をつなぐ大切な場所です。
 

五行商店街入り口のゲートを菜花が通ることで、令和と大正時代を行き来することができます。さらに菜花にとっては、もうひとつ浅からぬつながりがあるこの場所。小学生の時にあった陥没事故は、ちょうどこの五行商店街の前で起きたものだったのです。

ゲートを通った先にあるのは、大正時代の商店街。その商店街は五行商店街の過去の姿なのか、それとも別の町なのか。物語を読み進めると、その答えがおのずと見えてきます。

そしてなぜこの商店街が、大正時代への入り口となるのか?その謎はまだ、解き明かされていません。その答えがわかる時、物語がまたひとつ核心へと迫ることになるかもしれません。

『MAO』の2つの魅力を知れば、さらに漫画が面白い!

次々と新たな事実がわかり、その展開から目が話せない漫画『MAO』の魅力とは何なのでしょうか。
 

1.実際の歴史と重なる展開

まず1つめの魅力として歴史上の出来事が、重要ポイントとしてストーリーに絡んでくることがあげられます。大正時代に起きた歴史上の出来事で、真っ先に浮かぶ関東大震災。この関東大震災が、物語の変換点として登場します。

また大ナマズが暴れると大地震がおこる、要石が大ナマズを押さえることで地震を鎮めているといった日本の伝説についても作中で描かれているのです。

2.シリアスさが新感覚なるーみっくわーるど

続いて2つめの魅力。それはギャグテイストの作品が多い高橋留美子が、本作はシリアステイストで描いているということ。特に主人公の摩緒には、ギャグ要素がほとんどありません。そして過去作品のテイストを受け継ぎつつ、るーみっくわーるどが展開されています。

たとえば陰陽師と蟲毒の設定には漫画『犬夜叉』の巫女と妖怪の設定に近いものを感じます。また、ヒロインが過去にタイムスリップするという点も共通点としてあげられます。普通の人間ではなくなった摩緒が呪いを解くため猫鬼を約900年を探し続ける姿は、漫画『人魚の森』シリーズで不老不死となった主人公の勇太と真魚が人魚を探し続ける姿と重なります。

漫画『MAO』は新感覚のるーみっくわーるどでありながら、過去作品の遺伝子を受け継いだ作品といえるのではないでしょうか。

漫画『MAO』今後の展開を考察

 

まだ回収されていない伏線が多数あり、今後の展開が楽しみな漫画『MAO』。物語はどのような展開を魅せていくのでしょうか?

今後の展開を考察する上で、大きなポイントとして以下の4つがあります。

  1. 呪禁道を生業とする御降家・後継者争いの真実
  2. 御降家当主の娘・紗那が抱える秘密
  3. 摩緒が猫鬼の呪いを受けた日に起こった、事件の真相
  4. 猫鬼の正体と真の目的

今後この4つの謎が明かされる展開が、待っていると予測されます。全ての謎が明らかになるとき、摩緒と菜花の関係はどのように変化するのか。そこに恋愛要素が加わるのかにも、注目です。

そして摩緒とは違う時代に生きる菜花は、最終的な決断をしなければならない時が来るかもしれません。

 

著者
高橋 留美子
出版日

次々とヒット作を生み出す紫綬褒章の漫画家・高橋留美子!代表作は『犬夜叉』

漫画『MAO』の作者・高橋留美子は、次々とヒット作を生み出すヒットメーカー。

1978年に漫画『勝手なやつら』でデビュー後、「週刊少年サンデー」の看板漫画家の1人として活躍し続けています。小学館漫画賞を、少年部門で2度受賞。長期連載作品のほとんどがテレビアニメ化しており、シスターとボクサーの恋を描いた漫画『1ポンドの福音』は亀梨和也主演でテレビドラマ化されました。

軽快なリズムでくり広げられるギャグコメディは、どこか爽快さを味わせる読後感。シリアスタッチの作品では残虐な描写も登場し、悲壮感を感じさせる場面もあります。またこれまで多くのキャラクターが生み出されてきましたが、変態性を秘めたキャラなど個性的なキャラが多いのも特徴です。

2020年秋には、漫画やアニメが与えた影響力の大きさが評価され紫綬褒章に輝きました。ファンからは喜びや祝福の声とともに、それぞれの作品への思い入れがSNSなどで語られました。

 


『1ポンドの福音』について知りたい方は、主演の亀梨和也が実写化した作品一覧の記事でご覧いただけます。

 

亀梨和也の実写化はリアルかつ亀梨流!出演映画、テレビドラマを原作と比較して紹介

続々と新事実がわかりはじめ、その展開から目が離せない漫画『MAO』。高橋留美子の週刊少年サンデー連載作品は30巻を超える長寿連載が多くありますが、漫画『MAO』は何巻まで続くのでしょうか。どのようにストーリーが広がっていくのか、今から楽しみですね。高橋留美子の過去作品との共通点を見つけると、より深く本作を楽しめるかもしれません。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る